2013年3月13日水曜日

LED電源の追考


LED電源の追考



三端子レギュレータやオペアンプを使用した電源回路は、最初に何かしらの電位を出し、 その後、基準電位と比較して高ければ低く、低ければ高くなるように調整し続ける帰還型の 安定化電源回路です。この短い説明からも分るとおり、帰還の仕方によっては微小な 高低(発振)を続ける回路です。 私はこの構成が何かシックリこなくて、他に良い回路はないかと検討していたところ、 シャント型の電源回路と出会いました。と同時に、 Prostさんが広められたLED電源 とも出会い、後者の電源を解析し始めました。

LED電源以外の安定化電源回路が悪いというわけではありませんが、LED電源はその構造の簡単さ から、自分一人で原理が理解できたという点で愛着のようなものを持っています。 Prostさんには感謝です。 LED電源を幾つか作っているうちに、もう少し発展させる事が出来ないかと思い、考察と実験をしてみることにしました。


基本回路

LED電源の基本は下図の回路です。


変則的なエミッタフォロアと言えばいいのでしょうか? D2~DnのLEDの電圧降下を利用してQ2のトランジスタのベース電位を決め、 Vbe_q2分下がった電圧が出力されます。D1, Q1, R2 で定電流回路を構成しています。 基本的にエミッタフォロアなので出力は低インピーダンスになります。 定電圧電源として動作する内容をもう少し詳しく見ていくことにしましょう。





  LEDの電圧降下でD1の両端には V_d1 の電位差が生じます。
D1のカソード側に繋がっているトランジスタQ1では、ベース・エミッタ間電圧 Vbe_q1 が生じます。
これにより、抵抗R2の両端には V_r2 = V_d1 - Vbe_q1 の電位差が生じ、R2には I_r2 = V_r2 / R2 の電流が流れます。

  抵抗R2に流れる電流 I_r2 はトランジスタQ1の所で、ベース電流 Ib_q1 と コレクタ電流 Ic_q1 に分かれます。
コレクタ電流はベース電流のhFE倍流れるので、コレクタ電流の方がかなり多く流れます。
逆を言うと、hFEが大きいトランジスタを使用した場合、エミッタ電流 = コレクタ電流 としても差し支えなくなります。

コレクタ電流 Ic_q1 は 直列に接続したLED(D2~Dn)とトランジスタQ2のベース電流に分かれます。

  直列に接続したLED(D2~Dn)は、流れる電流 I_dn によってそれぞれ電圧降下が発生して…総和した V_dn の電位差が生じます。
この電位は、トランジスタQ2のベース電圧となります
また、トランジスタQ2ではベース・エミッタ間に Vbe_q2 の電位差が生じます。
これらより、出力電圧 Vout = V_dn - Vbe_q2 となります。





この様に、LED電源では要所要所にLEDの電圧降下で生じる電位差を利用して基準電位を作って Vout を定電圧化しているのです。
基準電位の元となっているLEDは流す電流の量に伴って電圧降下の量が変化します。

LEDのI-V特性は仕様書になかなか載っていないので、試しに秋月のLED OSYL3133A(黄色) の特性を測定してみました。
LEDも半導体なので個体差がそれなりにありますし、測定時の温度にも影響を受けるのでこのI-V特性は参考程度にしてください。


LEDは電圧を上げていくと、ある点(Vf)より急激に電流が流れる様になります。上記のLEDでは仕様上 Vf = 2.1[V] となってます。この電圧付近を境に電流が流れる様になります。 LEDの種類(特に色)によりこの電流が流れはじめる電圧が変わり、 赤・黄・緑は低く 2[V]前後、 白・青が高く 3.5[V]前後です。 なので、+15Vの電源とするには上記の黄色のLEDではD2~Dnの部分に約8個のLEDを必要とします。



では、入力電圧 Vin は何[V] 以上必要になるのでしょう?

  先ず思いつくのが、トランジスタQ2のコレクタ・エミッタ間の飽和電圧 Vce(sat)_q2 です。
Vce(sat)はコレクタ電流に依存して変化します。

2SC1013の場合(詳細な仕様書を見つけられなかった)、Ic=1[A] で最大 1[V]のようです。

  別の経路も確認しておかなければなりません。
基準電位を生成する回路側です。

この電圧は、Vbe_q2 + Vce(sat)_q1 + V_r2 になります。

V_d1=2.1[V], I_r2=10[mA] とすると、だいたい 2.2[V] くらいでしょうか。

従って、Vin は Vout より上記どちらか大きい方 以上の電位を必要とします。 細かい事を言えば、Voutが小電圧の場合、V_d1 + V_r1 とかにも注意をした方がいいです。
何れにしても、Vout は 基準電位を生成する V_dn の値に左右されるので少し大きめに見積もっておく方が良いでしょう。
VinとVoutの差をあまり大きな値にすると電圧降下分を熱として放出する Q2 のトランジスタが熱くなってしまいます。

それと、ここで求めた Vin の値はあくまでも動作するのに最低必要となる電圧です。 この回路より前段で電圧が安定化されていない場合は、最低限ここで求めた値以上の電圧を確保する必要があります。



電圧降下やその他色々な所で 電気→熱 の変換が行われています。
代表的なのが、Q2 ですが、Q1やR1も要注意です。

  Q2 の発熱量は Vin と Vout の電位差と I_out に比例して増加します。ここは定電圧化の要なので致し方なく、しっかりと放熱してやってください。 Q1 の発熱量は微量です。V_r2 と V_dn との電位差(Vce_q1)と Ic_q1 に比例しますが、そもそも Vce_q1 が小さいのと、流す電流量が 10mA前後なので気にしなくてもよいかもしれません。

以外と見落とすのが R1 の発熱量だと思います。 ここは電流は D1 が安定する 10mA(+ Q1のベース電流)くらいですが、R1の両端にかかる電圧は Vout - V_d1 になります。 +15[V]の定電圧電源とする為に、Vin = +18[V] とした場合、R1には約+16[V]の電圧がかかります。これは 1/6[W] 相当 になるので、チップ抵抗だとアウトの可能性が高いです。


基本回路の弱み

基本回路のままでは、2つの弱みを持っています。その2つ共、基準電位の変動をきたす要因になります。

  1つ目が、入力電位 Vin の変動による定電流回路の電流値の変化です。

定電流回路の要となっているのが LED(D1) ですが、これは前出の I-V特性 より、流れる電流が変化すると電圧降下分も変化してしまいます。 基本回路では D1 と R1 が直列に繋がっている構成(厳密には Q1 のベースも繋がっている)なので、入力電圧が変化するとこれらに流れる電流も変化します。

仮に R2=150[Ω] で V_d1 が 0.1[V] 変化したとします。この場合の R2 の電流の変化量は ΔI_r2 = 0.1 / 150 = 0.6[mA] です。 この電流の変化は D2~Dn へ直接伝わります。なので、D2 の電圧降下が約0.02[V] 変化します。これが8個直列になっていると8倍の0.16[V]変化することになります。


  2つ目が、出力電流 I_out の変動による基準電位生成LEDへの電流変化です。

定電流回路から出てきた電流 Ic_q1 は Q2 のベース電流 Ib_q2 と 基準電位用LED(D2~Dn)の電流 I_dn に分かれます。 出力電流 I_out は Q2 のエミッタに直接繋がっています。エミッタ電流はベース電流とコレクタ電流を足した量になります。 また、Ic = hFE x Ib の関係がありますから、エミッタ電流が変化すると必要とするベース電流 Ib_q2 も変化します。 Ic_q1 が一定であったとしても、Ib_q2 が変化すると必然的に I_dn も変化します。 Q2は中電力用のトランジスタを使用する事が多く、その他の点も考慮して hFE=100 くらいを使用する機会が多いと思います。

いずれも、前後の回路によって Vin もしくは、I_out に変動が無い回路では問題になりませんが、 そのような構成にするのは難しいです。特に I_out が一定の回路が後段に付くなんてのはまずあり得ません。


改良検討

定電流回路部の弱みについて、いくつか改良方法を思いついています。 その例を下記します。

  LEDに直列に繋いでいるのが抵抗器なので、電流値は電圧変動によってもろに変動します。 なのでこの部分に定電流素子(CRD)を繋いで電流の安定化を図る方法です。 電圧の変動分を全てCRDで吸収するので、LEDに供給する電流が安定します。 電圧が低い場合は抵抗器は無くても良いです。 ただし、CRDが安定に動作するためには 5[V] くらいの電圧を必要とします。 CRDの代わりに JFET のソースとゲートを直結した定電流回路を用いるのも可能です。

この方法は実際に プリアンプの電源 を作成した時に使いました。 この時はFET版を使ったのですが、FETが結構熱くなり、簡素な放熱版を付けました。

  LEDの電圧降下を利用していたのを、トランジスタのVbeによる電圧降下を利用するように変更してみます。 これにより、図中の Q1, Q2 で強帰還がかかり、定電流回路を構成します。 Vbe_q1はベース電流 Ib_q1 に依存し、Ib_q1 は Ic_q1 に依存しますが、Ic_q1 の変動事態 そう大きくないので Ib_q1 ひいては、Vbe_q1 への影響はさほどありません。

2SA1015 を例にとると、Ib = 1~10μA の時にVbeが比較的安定(変動が少ない)しています。 hFE = 200 とすると、この時の Ic は 0.2 ~ 2mA です。なので、R1 の消費電力を抑える事もできます。 また、R2の両端電圧をLEDの電圧降下を利用していた時より小さくできるので、僅かですが低い Vin でも駆動する事ができます。

この方法は実際に ぺるけ式 FET式差動ヘッドホンアンプ(AC100V版) で使用してみました。

出力電流 I_out の変化による 出力電圧 V_out の変化については、電圧制御トランジスタ(基本回路のQ2)の hFE を上げる事くらいしか思いつきません。

  hFEを上げる方法として、トランジスタを2つ使ったインバーテッドダーリントン接続を試してみました。 インバーテッドを選んだ理由は、見かけ上のhFEを大幅に上げる事ができる事と、 Vbeを生成するトランジスタと Vin からの電圧降下分の損失を吸収(熱に変換)するトランジスタを分けることができ、 Vbeへの熱の影響を大幅に軽減できるから、 V_out が V_dn からトランジスタ1つ分の Vbe だけ降下した電圧となるので効率が良い事です。 最後の理由が決定的ですね。2つ分でよければダーリントン接続でも良いわけですし…

R3 は発振防止用です。定電圧を得るにはこの抵抗はない方が良いのですが、発振してはもともこうもないので 抵抗を入れます。ここに流れる電流は少ないことから 100~330[Ω]くらいで発振しない値を選びます。 といっても具体的な値は試してみるのが手っ取り早いです。

この方法は実際に ぺるけ式 FET式差動ヘッドホンアンプ(AC100V版) で使用してみました。発振防止用の抵抗は 120[Ω] を使っています。





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管理者: 宝 寿々郎(TAKARA Jujurou)
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ジャンク無線LANでAP増設

ジャンクでPlanexのMZK-W300NH2を599円で購入。
Edimax社のBR-6424N V2のファームウェア(1.21)を入れて、家庭内LANにアクセスポイントを増設しました。

M.ABEさんの「無線LANファームウェア入替え」を参考にさせて頂きました。
独力ではAP、ルータの切換えスイッチをルータにする事で、無線LANが有効になる事は気づかなかったと思います。
M.ABEさんありがとうございました。

<経緯>
自宅の無線LAN、自室では電波が弱いので有線を引いています。
しかし無線LANがないと、何かと面倒。
有線のPCにUSBでつないで、インターネット接続の共有で繋いだりもしてみたけれど、調子が悪い。
それにPCを一々起動するのも面倒。

AndroidやPSPでちょっと接続するだけなので、AP(アクセスポイント)を増設しようと思っていました。

ヨドバシとかみると、製品は数千円します。

少々古くても遅くても良いので、安い無線LANルータがあったら買おうと思い、秋葉原をぶらぶらしてたら
ジャンクの無線LANルータが599円で売っていました。

また安物買いの銭失いになるかと思いながらも、600円位なら勉強代でも安いと思い購入(^^;

自宅に戻った後Googleの検索窓に"MZK-W300NH2"と打つと、検索候補として"MZK-W300NH2 不具合"が!
またやっちまった。 orz
600円とはいえ、捨てるのはそれ以上のダメージがあります。
といっても使えない物を置いておくのも嫌だし。

とりあえず調べると「地雷を踏んだ」、「別製品に買い替えて世界が変わった」などいっぱあい(ノ゚∀゚)ノ
どうやら接続が不安定で、利用環境によってまともに通信ができなかったり、接続速度が遅くなったりするらしい。
1年間毎日電源On/Offで性能を確保していたという人も何人かいました。

DD-WRTとかでLinuxにでもと思ったけれど、非対応という事を先人達が語っているのを見て挫折。

そんな時、M.ABEさんの「無線LANファームウェア入替え」を発見。
OEM元がEdimax社のBR-6424N V2ということで、ファームウェアを入手。
ダウンロード時でメールアドレスを求められたけれど、良く見るとOptionと書いてあるので、特に入力しないでOKでした。

ファームウェア、何気に使っていましたが、Firmwareなんですね。(Firewallと似ていて、見落としましたw)

アップデートも済み、設定を弄ってみたら情報通り無線LANが無効になっていました。
背面のスイッチをルータにする事で無事設定も完了。
環境画面では設定がAPとなっていました。

599円で無線LAN APと有線の口を4つをゲットです。
これで自室のネット接続が楽になります(^-^)

ディスクリート定電流回路

部品入手のお助けページディスクリート定電流回路用部品

ディスクリート定電流回路個別部品で構成した定電流回路で、外部からの補助電源を必要としない自立型です。
定電流の基本特性は、ツェナ・ダイオードの電圧特性(ツェナ電圧)とエミッタ抵抗(RE)の値でほぼ決定されます。ツェナ電圧が6.2Vのものを使った場合、エミッタ抵抗(RE)にかかる電圧はツェナ電圧からトランジスタのベース~エミッタ間電圧(約0.65V)を引いた値になりますので、右の回路の場合は5.55Vになります。トランジスタのエミッタに流れる電流は、
5.55V÷RE=5.6V÷91Ω=61mA
で決定されるので、RE=91Ωの場合だとエミッタ電流は61mAになります。一方で、ツェナ・ダイオードを動作させるための電流と、トランジスタのベース電流の両方を調達しているのが定電流ダイオード(CRD)です。ここに流れる電流は、回路の条件に関係なく定電流ダイオード(CRD)の定格電流値で固定です。かりにここに2.0mAタイプの定電流ダイオード(CRD)を使用したとします。そうすると、以下の関係が生じます。
(ツェナ・ダイオードの動作電流)+(トランジスタのベース電流)=2.0mA
そして、トランジスタのベース電流は、
トランジスタのベース電流=トランジスタのコレクタ電流÷hFE=トランジスタのエミッタ電流÷(hFE+1)
という関係があります。2SD2531のhFEが100だとすると、以下のようになります。
トランジスタのベース電流=61mA÷(100+1)=0.6mA
ツェナ・ダイオードの動作電流=2.0mA-0.6mA=1.4mA
ということになります。ツェナ・ダイオードの動作電流は最低でも0.5mAは確保したいので0.9mAの余裕があります。この設計の場合、hFEが50まで低下しても大丈夫です。最終的な定電流特性は以下のようになります。
定電流特性=コレクタ電流+定電流ダイオード電流=(61mA-0.6mA)+2.0mA=62.4mA
定電流特性=エミッタ電流+ツェナ・ダイオードの動作電流=61mA+1.4mA=62.4mA

Group用途/種類名称規格測定項目測定条件
(周囲温度20~28℃)
Notes数量費用
ディスクリートSET定電流ダイオード
CRD
E202またはE2721.81mA~2.40mA
または
2.3mA~3.2mA
定電流特性Vak=10~12V許容範囲内になるものを2本ペアで選別
出力段プレート電流が40mA×2未満の場合はE202、40mA×2以上の場合はE272※
2850円
ツェナ・ダイオード
ZD
HZ6-C2(6.0~6.3)6.20V±0.1VVZDIz=2.5mA±0.5mA-2
制御
Tr
2SD2531hFE>100hFEIc=1mA(暫定)hFEが100以上のものの中から、
hFE値が揃ったものを2本ペアで選別
2
放熱シリコン
ラバーシート
13mm×18mm--シリコン・グリスの方が望ましく、
これをを塗布した場合は不要ですが2枚入れておきます。
2

※出力段プレート電流が40mA×2以上の場合は2SD2531のベース電流が多くなるため、CRDの電流値を多めにします。

梱包・送料:通常200円、ちょっと大きく・重くなると250円。
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6種類の定電流回路の実測データ


6種類の定電流回路の実測データ


定電流回路は方式によって特性がかなり異なります。本レポートは、FET差動ヘッドホンアンプ用の約4mAの定電流回路について、6パターンの方式ごとに精密に実測したものです。方式ごとの特徴が良く出ていますので参考にしてください。

実測データ

下図は、実験で使用した6種類の回路です。
(1)4mAのCRD(石塚電子E452)。6V以上の動作電圧を与えてようやく定電流らしい特性が得られます。
(2)2mAのCRD(石塚電子E202)を2個並列にしたもの。CDRは電流値が少ないものほど低い動作電圧から定電流特性が得られるため、このようにすると動作電圧が4Vくらいでも定電流特性が得られます。
(3)2SK30-GRランクでIdssが約4mAのもの。CRDとJFETは同じ構造なのでこのような使い方ができます。定電流特性はJFETを流用した方が優れています。
(4)Web版のFET差動ヘッドホンアンプで使用している定電流回路です。2個のNPNトランジスタを使った帰還型です。動作電圧は1Vあれば非常に優れた定電流特性が得られます。
(5)2個のシリコンダイオードと1個のNPNトランジスタを使ったシンプルかつ標準的な定電流回路です。(4)の帰還型よりも少しだけ低い動作電圧になっています。
(6)エミッタ側に抵抗を入れた方式のカレントミラーによる定電流回路です。6つの中では最も低い動作電圧になっています。エミッタ抵抗値をさらに小さくしてゆけば、もっと低い動作電圧でも定電流特性は得られます。

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